平成21年度高校生社会貢献活動推進事業 実施のまとめ
 
 
1 取組の概要
平成18年12月に教育基本法が約60年ぶりに改正され、それに伴って改訂された学習指導要領では、道徳教育や体験活動等を充実するよう規定された。本校では、従来から行ってきた社会貢献活動に少しアレンジを加え、多様な体験活動を通して道徳性と社会性を養い、主体的に判断し、適切に行動できる人間を育てることを目標とした。
○校内では『献活』と銘打ち、学校周辺の福祉施設、保育園、小学校及び町内会を訪問し、社会奉仕体験活動や交流体験活動を中心に取り組んだ。
○対象は原則1年次生全員とした。
○年度途中からの取組となったので、1学期及び夏季休業中は部活動や有志を対象とし、個人としては各家庭周辺での活動を呼びかけた。2学期以降は年次全体、部活動、有志を対象とした。
○記録用紙を作成し、活動を行う前と後とで気持ちにどのような変化が表れたかを記録させ、2学期にアンケート調査を実施した。
○活動の発表会は12月に行った。
 
2 取組の内容及び工夫
(1)実施事業等
ア 実施事業の内容
・介護老人保健施設訪問、保育園、小学校児童クラブで子どもたちとのふれあい、町内会の方たちとの交流、地域の清掃活動(当日は雨天のため校内へ変更)等
 
イ 生徒全員の取組とするための工夫
・事前に活動可能な場所と内容の念入りな調査・打合せを行い、その後生徒にアンケート調査を実施した。各活動場所とも希望者が定員をオーバーする結果となり、やむを得ず各担任により希望理由などを基に活動先を決定した。希望が叶わなかった生徒は、校内の清掃活動を実施した。
 
ウ 活動時間(機会)を確保するための工夫
・SHRを繰り上げて終了時間に余裕を持たせたり、手話講座については家庭科の授業の一環として時間を確保した。また、有志で参加できるよう、学校に案内のあったものについては可能な限り生徒に紹介した。
 
(2)教員の指導体制の工夫(校内組織・研修等)
・教員プロジェクトチーム(13名)をつくり、生徒も各クラスから委員2名を選出した社会貢献活動(献活)委員会を組織した。教員チームがサポートしながら献活委員会が主導するという形で取り組んだ。また、該当年次である1年次団では、年次会等を利用してさまざまな活動の支援をお願いした。
 
 
 
3 社会貢献活動により生徒に見られた変容(意識・生活実態等)
・生徒や教員の智恵を絞りながら検討を重ねて始動した献活であるが、11月に生徒に対して行ったアンケ−ト調査では、年次全体で献活を実施している1年次生の60%が、『環境意識やボランティア意識の高揚に努めている』と回答した。同じ質問に対して例年は40%前後であり、献活に取り組んだ年次生とそうでない年次生の意識に差が生じているように思われる。
 
4 1年間の総括、課題及び次年度に向けた改善方策
・夏季休業中については、「各出身地でできることを何か考えてみよう」と呼びかけ、後楽園や神社の清掃活動、廃品回収などに参加した生徒もいた。参加してはじめて、「これまで気づかなかったが、自分の代わりに誰かがこのようなことをしてくれていたことがわかり、感謝の気持ちをもった」等の意見が見られた。
・2学期には、生徒の希望を優先し、いくつかの献活を行ったが、自主的に行った者、何となく行った者、気はのらなかった者等も含め、その感想から判断する限り、まずまずの成果が収められたのではないかと思う。
・この事業を通して、学校全体として社会貢献活動の気運を高めることが大切である。今年度は、教職員はもとより、町内会長さんをはじめ、地域の方々の協力も仰ぎながら、何とか無事に活動を終えることができた。来年度は、今年の経験を生かし、次の点を検討しながら活動を行いたい。
 
(1)日程の確保
本校の生徒は、ほとんどが何らかの部活動を行っており、年次全体で献活の日程を確保することが非常に難しい。
(2)活動可能な人数、時間などの制限
校外で社会貢献活動を行う際には、活動できる人数、時間といった制限が多くある。また、交通手段も徒歩か自転車に限られるため、検討が必要である。
(3)地域との連携 
本校は全県学区であるため、地域住民とのつながりが比較的薄い。今後地域社会と連携して何ができるかを検討する必要がある。
(4)各家庭周辺との連携 
本校は約100校の中学校から生徒が通学しているため、今後各家庭周辺での献活をさらに後押ししていく必要がある。 
 
◇具体的な取組                             
 
〈1学期・夏季休業中〉
○各出身地で何ができるかを考え、活動する。  
・7月は月末まで前期補習、8月も部活動(本校は1年次生の約95%が加入)、お盆明けからは後期補習と文化祭の準備のため、各クラスとも約5〜10%程度の活動であった。
○「児童生徒への放課後等における学習支援ボランティア」(指導課からの依頼)
・2年次生6名,1年次生1名 登録
○「地球市民フェスタ in おかやま 2009」
・7/25(土)2年次生7名,1年次生11名が参加(国際交流、その他)
○お年寄りとの交流やボランティア事業への参加 
・6/20(日)テニス部+有志:介護老人保健施設『古都の森』訪問 
・8/4〜12 2年次生1名,1年次生2名 「すずらん」民家型デイサービスでのボランティアに参加  
・8/20(木)吹奏楽部:「少年の主張岡山県大会」アトラクションへ参加
○自然災害に対して、義援金を送ることを決定 
8月上旬に美作地区を中心に「台風9号岡山県大雨災害」が発生。生徒と話し合い、義援金を送 ることを検討。
→全校生徒からと、文化祭で本校を訪れた一般の来校者から義援金を募ることを決定。
 
〈9月〉
○「台風9号岡山県大雨災害」募金活動
・献活委員が中心となり、全校生徒に義援金の呼びかけを行う。文化祭でも、一般来校者から義援金を募る。
・9/7〜11:生徒対象に募金活動を行う
・9/12:翠緑祭(文化祭)で来校者に募金活動を行う
→計48,112円が集まり、日本赤十字社岡山県支部に送金した。
 
〈10月〉
○「あしなが学生募金」,部活動等
・10/24(土),25(日)JR岡山駅周辺
病気や災害、自殺で親を失った子どもの進学を支援する「あしなが学生募金」活動に、本校から約10名の生徒が参加した。
○10/11(日)吹奏楽部:「秋のおかやま桃太郎まつり」アトラクション参加
○10/15(木)陸上競技部:「財田小学校訪問」陸上競技会のための指導
 
〈11月〉
○11/28(土)テニス部+有志:介護老人保健施設『古都の森』訪問
  
〈12月〉
○『献活デー』12/3(木)、新型インフルエンザによる数名の出席停止はあったが、1 年次生全員 による『献活』が行われた。内容は次のとおりである。
 
@財田小学校児童クラブ訪問「静電気の発生」「海ホタルの生態」「スライムを使った遊び」等)
A特別養護老人ホーム「けしごの里」訪問童謡の演奏」やゴム風船を使った「風船バレー」で交流)
B長利町内会「生き生きサロン」訪問色紙を使ったくす玉の作り方を伝授していただく)
C城東チャイルドセンター訪問(子どものお世話等)
D学校周辺清掃活動(雨のため校内に変更)
E校内清掃活動
 
○献活大発表会…12/17(木)7時間目に、12/3(木)に行った『献活』の発表会を開いた。
手話講座…12/17(木)〜21(月)
岡山県聴覚障害者福祉協会の協力をいただき、1年次生全員を対象に『手話講座』を実施した。講義のあと、簡単な手話の実践を行った。
・生徒の感想
「手話だけでは、なかなか思ったように意志が伝わりませんでしたが、顔の表情や口の動かし 方にも注意すると、次第に理解してもらえるようになりました。」
 
12月以降の活動〉
◎現在、学校全体で行っている活動
・エコキャップ(ペットボトル)運動→1月末現在、4,080個回収(ポリオワクチン5人分相当)
◎教科、委員会、部活動、校内の有志等で行っている活動
○ハザードマップの作成
・12/25(金)1年次生を中心とした20名の希望者 
東岡山駅から学校までの通学路について、交通面と防犯面から危険な箇所を調査した。危険と思われる場所については、写真を添付したハザードマップを作成し、生徒昇降口に掲示し て注意を呼びかけている。
○「すずらん」民家型デイサービスでのボランティア 
・12/29(火)〜30(水)2年次生2名が参加 
○3/17(水)合唱部:介護老人保健施設『古都の森』訪問予定
  
「献活」生徒の感想から(抜粋)
◎よかったこと
・清々しい達成感を味わうことができた。
・相手の顔が嬉しそうだったので、こちらも嬉しくなった。
・今まで自分の代わりに誰かがこのようなことをしてくれていたことに気付いて感謝の気持ちを抱いた。
・活動を通して、子どもたちとの触れ合い方や話す楽しさを学んだ。
・幼い子どもが、戸惑いの表情を見せながらも手を振って迎えてくれてとても嬉しくなった。
・献活のつもりで行ったのだが、逆にこちらが活力をもらった。
・感謝やお礼の言葉を掛けてもらったことで、とても達成感を味わえた。
・自ら進んで行ったわけではないが、みんなで協力すると楽しくなった。
・この嬉しい気持ちは、やってみないと分からないだろうなあと思った。
 
◎今後考えたいこと
・身体に不自由のある人と何かをするときは、全員で楽しめるようなことを考えなければならない事を知った。(例:伝言ゲームは難しい)
・活動を行う際、「さあ、楽しみましょう!」と言うのは罪である。様々な拘束、理由や目的が奥にあるのではないかと考慮すること。