生物部
活動内容 私たち城東高校生物部では、自分たちの興味・関心のある生物(アカパンカビ、ツユクサ、など)について自分たちでテーマを決め自由に研究を行っています。
・水棲動物の観察
アカパンカビの突然変異体の分離とその解析
ツユクサの組織学的解析   
   
翠緑祭での活動   ・城東高校の近辺に生息する水棲生物の展示
            ・ツユクサの研究発表
            ・アカパンカビの研究発表
            ・植物組織の組織培養の研究発表
            ・スケッチの展示        
活動場所
活動日
部長から 生物の多様性はなぜ必要なのだろうか?
 自然保護の必要性を説くとき、その理由として「生物の多様性が失われるから」とよくいわれる。確かに自然保護を行う理由として最適な理由だと思う。けれども「生物の多様性」はなぜ必要なのだろうか。「生物の多様性」が叫ばれている昨今、僕は「生物の多様性」が必要な理由を人間のエゴ以外から見つけだすことができないでいる。
 「生物資源」を有効に活用するために「生物の多様性」を保持し、文化財を保護するように自然を保護する。これらは自然のためになされているかのようにみえるが、結局は人間のためではないかと僕は思う。僕が求める答えは人間の利害のためを説くのではなく、生命の絶対的な価値に基づいた「生物の多様性」の必要性です。 

あなたの意見を聞かせて下さい。  意見はtakuji_oonishi1@pref.okayama.jpまで  
活動成果

水棲動物の飼育と観察
    


現在の水棲生物をとりまく環境について

1  河川工事
  日本の公共事業は自然への配慮があまりなされていなかった。その中でも特に河川工事は水棲生物への影響が大きく水棲生物の生きてゆける場所を狭め、その 結果、私たちの身近にいた生物達は姿を消してしまった。
(例)三面コンクリートは底に土がたまりにくい。そのため川底に生息する生物(水草、シジミ等の二枚貝、ドジョウ等の底生魚) などが棲めなくなり、二枚 貝に産卵するタナゴの仲間や、水草などに産卵する魚や昆虫などが繁殖できなくなる。そうなると、それらを捕食して生きてきた生物もエサがなく、そこにはすめなくなる。また、三面コンクリートの川は水の流れや川の地形にあまり変化がなく、上流から流れ込む浮遊物がたまりにくく、魚などの隠れる場所がほとんどなくなり、生息できる生物も限られてしまう。三面コンクリートは人間にとって好都合につくられているので、川底にたまった土や砂が簡単に取り除かれるため、その上に築かれた生態系はすぐに破壊される。

2  外来種による日本の生態系の破壊
  日本には本来生息していなかった生物たちが海外から持ち込まれたため、日本に昔からいた生物たちが追いつめられている。特にブラックバス、ブルーギルによる生態系の破壊が激しい。ブラックバスは釣りの対象魚となっており釣り人などの手によって無造作に放流され生態系の破壊を助長している。県によってはブラックバスの放流を罰するところもある。ブラックバスなどの外来魚により琵琶湖などでは、昔から営まれてきた漁が日本産の魚が減少したため甚大な被害を受けている。また、ニッポンバラタナゴとタイリクバラタナゴの交雑のように日本の固有種と外来種が交雑して純粋な日本固有種が少なくなっている例もある。

3  採集圧による希少種の激減(業者による乱獲)
  希少価値のある生物はマニアから注目され高値で売買されるので業者に乱獲されて売られてきた。しかも、業者は根こそぎ捕獲し生息地を壊滅状況に追い込む。


アカパンカビの実験、観察

1.突然変異体の分離

 私たちは生物の形や性質と遺伝子の関係についてアカパンカビを用いて研究を行っています。アカパンカビはパンなどに生えるオレンジ色をしたカビで、一世代の時間が短く、試験管で多数の菌体を培養することができます。遺伝子に傷害を与える紫外線(UV)をアカパンカビの胞子に照射し、人為的に突然変異を起こして、オレンジ色のアカパンカビから、白い突然変異体(アルビノ)を単離しました。 

 突然変異体の単離の手順
   1 アカパンカビに蒸留水を加え、ろ過して胞子と菌糸にわけ、得られた胞子をシャーレに移す。 

   2 UVを20〜40秒照射する。
   3 UVを照射した胞子を養分を含んだ寒天培地にまく。                                   4 数日間、暗室に置く。
   5 菌糸が生え新しい胞子ができたら、それを拾って別の培地に植え替える。 
   6 うまくいっていれば突然変異体が採れる。 
    ※ これらの作業は全て無菌操作でおこなう。

2.突然変異率の解析
ストレスが及ぼす突然変異率への影響と生物進化との関係   
 私たちは、環境のストレスが生物の進化にどのような影響を与えるのかをアカパンカビを用いて調べています。

仮説 : 生物が進化していくうえでストレスは重要な鍵になっているのではないかと考えています。それは、ストレス を与えられた生物はそのストレスの中で生き抜いていくために自らを進化させたのではないかということです 。そして、そこで得た形質は子孫へ遺伝するのではないかと考えています。

実験方法: アカパンカビ(温度感受性のイノシトール要求性株)に様々なストレス(温度、pH、浸透圧など)を与えた 後、紫外線を照射し、復帰突然変異体の発生率を測定する。

結果: まだ数回しか実験できていませんが、紫外線照射前に浸透圧ショックを与えると、リバータント(復帰突然変 異体)の発生率がコントロールに比べ高くなりました。

考察: 結果の解釈についてはたくさんのことが考えられるので、慎重に考えていかないといけないと思っています。しかし、生物は周りの環境の変化をキャッチし、自らの遺伝子を突然変異していく仕組みを持っている?なんて事も考えていけるのではと思っています。いずれにしても、気長にやっていこうと思っています。一緒に研究したいという方や、興味関心のある方は takuji_oonishi1@pref.okayama.jpまで連絡してください。


ツユクサの組織学的解析


以下の文章は城東高校生物部員の黒田友紀が「科学部等の研究集録」に発表したものである。

1.はじめに
 ツユクサについて、その植物体をサックスの植物組織の分類に基づいて観察したので報告する。
2.ツユクサについて
 ツユクサ科の一年草。単子葉植物。道端や畑の雑草としてふつうに生え、夏、花を咲かせる。

3.観察方法
 (1)葉の表皮の観察のしかた(剥離法)
  @ 葉の表皮は、ピンセットなどでその一端を挟み、注意しながら剥ぎ取った。
  A その小片をスライドガラスの上に置き、酢酸オルセインまたはヨウ素液を滴下し、カバーガラスをかけて顕微鏡で観察した。

 (2)茎・根の観察のしかた(徒手切片法)
  @ 茎または根を手でもって、任意の方向に剃刀で薄く切断した。
  A 切片をサフラニン液に漬けて染色し、水洗後スライドガラスの上に 置き、水で封じて顕微鏡で観察した。
4.観察結果
 (1)表皮系
  @表皮細胞
   A.葉の裏面表皮細胞
酢酸オルセインで染色したツユクサの表皮細胞(図1省略)。球状の核が観察された。ヨウ素液で染色したときに核小体が明瞭に区別できた。また、細胞内含有物としてシュウ酸カルシウムの針状結晶が多く見られた。
   B.花弁表皮細胞
細胞の両側が波状になっていた(図2省略)。細胞相互の結合度を高めて いると思われた。
  A孔辺細胞
酢酸オルセインで染色した孔辺細胞(図3省略)。三日月形の細胞で球形 の核と多数の葉緑体を含んでいた。ヨウ素液で染色すると葉緑体内に同化デンプンが認められた。
  B多細胞毛
葉の表面に1個の表皮細胞から生じたと思われる多細胞毛が観察された(図4省略)。
 (2)維管束系
  @茎の維管束
  一層の内皮で囲まれた中心柱に多数の維管束が不規則に散在してい た(不斉中心柱)。内皮に近い維管束は並立維管束とよばれるもので、そ の木部はV字型をしていた(図5−a省略)。また、中心柱内に多数存在する 維管束(図6省略)は外師包囲維管束と思われたが、単子葉植物の維管束は 外木包囲維管束が多いとされているので、今後の検討が必要である。
  A茎の道管
茎の縦断面の観察で螺旋紋道管(図7)と環紋道管が観察された。

             (図7)

  B維管束鞘(厚膜柔組織)
並立維管束の周囲に維管束鞘が観察された。これらの細胞は厚膜細胞(厚壁細胞)であった(図5−b省略)。  
  C根の維管束系
木部と師部が交互に放射状に配列していた(図8省略)。一般に単子葉植 物では、多原型が多いとされているが、放射数は5原型であった。
 (3)基本組織系
  @茎の皮層
   A.厚角組
表皮下に数層の厚角細胞でできた組織があった。この組織は、表皮下 に環状に配列していた(図5−c省略)。
   B.薄膜柔組織(同化組織)
球形、あるいは多角形をした細胞壁の薄い細胞(柔細胞)でできた組 織で、細胞内に多量の葉緑体が含まれていた(図5−d省略)。
   C.内皮(厚膜柔組織)
皮層の最内部で維管束と接する一層の細胞は、維管束側の細胞壁が特 に肥厚した細胞で、皮層内の他の細胞と大きく違っていた。この細胞列 を内皮とした(図5−e省略)。
   D.内鞘(厚膜柔組織)
内皮の内側の1〜2層の細胞列は、厚膜細胞からできていた(図5 −f省略)。細胞壁がサフラニンによってよく染色されていた。
  A茎の維管束を包んでいる部分
球形、あるいは多角形をした大型の柔細胞が多かった(図5−g省略)。な かにはデンプン粒を含んだ細胞があった(貯蔵組織)。
  B根の皮層
 球形、あるいは多角形をした大型の細胞でできていた(図9省略)。
5.おわりに
ツユクサの観察を行って、植物体の組織・細胞について知識を得るこ とができた。今後は、ムラサキツユクサの観察も行って、ツユクサと比 較してみたいと考えている。最後にこの報告をまとめるのにあたり城東 高校の生物の先生方にご指導していただいたので感謝する。
6.参考文献
猪野俊平:植物組織学.内田老鶴圃(1954).
木村康一,木島正夫:薬用植物学総論.廣川書店(1958).