岡山城東高校の日々をつづります
岡山城東な日々

SGH 第5回講演会を開きました

12月15日にSGH事業の一環として,講演会「学芸員の仕事~岡山でオリエント文明の遺産を活用する~」を開きました。

岡山市立オリエント美術館の学芸員である四角隆二氏に講師をお願いしました。
四角氏はオリエント文明の研究者で,シリアで発掘をしたことや大英博物館と共同で研究をするに至った話題などを含め,日本人と外国人とで変わらないこともあれば異なることもあると教えていただきました。ご自分の体験も含めながら,「やらなければならないこと」を継続してやっていると「できること」が増えてきて,「やりたい」ことに繋がると,熱く語ってくださいました。

講演での主な話題は,次のようなものでした。
○ 考古学で大切なのは,ただ本を読むだけでなくその場に行って風と空気を感じて考えること。
○ どうやって世界とつながっていったのか,そこで何を考えたのかを伝えたい。
○ 現地で働くために必要にかられて3か月でアラビア語を覚えた。
○ アラビアの若者が関心を持っている車は,日本の若者と全く一緒だった。
○ 西アジアの気候は,雨季と乾季,夏と冬の温度差が極端で,マイルドな気候の日本とは対照的。
○ 国が違えば,景色も気候も地形も食事も生活様式も違う。その地での「当たり前」が違うから 考え方やそこで作り出されるものも違う。
○ オリエント美術館は,東アジアでは唯一の公立オリエント専門ミュージアム。
○ 岡山の地にオリエント美術館ができたのは安原氏のおかげ。
○ 戦前の日本が失敗したのは,独りよがりの歴史を信じたから。ものに即した本当の歴史を知るべきである。
○ 目の覚めるような感銘を受けると,自然と体が動く。人は本気で考えたら行動するようになる。
○ ミュージアムの役割は「収集・保存」「調査研究」「展示」があるが,調査研究で海外とつながる。
○ かつては出土品がどこからやってきたのか調べることができず困っていた。最近になって兵庫県のSpring8で放射光を使う非破壊分析の方法を使って,ササン朝ガラスの制作年代や場所の起源を推定できる世界初の成果が得られた。
○ それらの成果が大英博物館との共同研究につながり,大英博物館に保存されている発掘品の分析をすることになった。

UTK_3878_R UTK_3897_R

○ できねえやと文句を言うことは簡単だが,自分の置かれた状況の中で最善のことをやっていると,思ったことに近づいていく。私も今回,今まで考えたこともなかったことに巡り会えた。得意なことを磨くことによって世界的に有名な大英博物館と協力できることになった。
○ 我々の生活はすでにグローバル社会になっている。服の生産などは知らず知らずのうちに世界とつながっている。
○ 「当たり前」が異なる人との意思疎通に求められる力は,聞く力+観察する力=想像力。当たり前と思っていることを疑ってかかることも大切。
○ 異文化コミュニケーションにおいて語学は手段。必要とされるのは伝えるべき内容。
○ 世の中には「やらなければならないこと」「できること」「やりたいこと」の3つがあるが,「やらなければならないこと」をくさらずに続けてやっていると「できること」が増えてきて,やがて「やりたいこと」ができるようになる。
○ 「何の役に立つのかな」と思っていることでも,やっていると,思わぬところで役に立つことがある。
○ 「一生懸命やる」とよく言うが,好きなことは一生懸命やろうと思わなくても人はやる。厭なことを他人に求められて一生懸命やり過ぎると心が疲れることがあるので,それは一生懸命はやらなくてもいい。でも手は抜かないことが大切。

最後に1年2組の生徒代表から,「今まで疑問に思ったことはなかったが,地域によって当たり前が違うことに気づかされた」「オリエント美術館が世界的にすばらしい美術館だとわかった。それは置かれた状況の下で最善を尽くしてきたからだと思う。自分も,自分が置かれた状況の中で最善を尽くしていきたい」というお礼の言葉がありました。

UTK_3902_R

カテゴリー: GLOBALⅠ, SGH パーマリンク