シベリウスのフィンランディアで幕が上がります。若きマエストロの指揮で、渾身の演奏です。
校長式辞(抜粋)
ただいま、三百十九名の皆さんに卒業証書を授与いたしました。卒業生の皆さんおめでとうございます。皆さんの胸中には今、卒業の喜びや惜別の寂しさとともに、入学以来の様々な思い出がめぐっていることと思います。桜の咲く校門をくぐり緊張とともに迎えた入学式、クラスの成長と団結力を実感できた翠緑祭、朝に夕にがんばった部活動、そして大学入試に向かってひたすら取り組んだ受験勉強など。それは決して平坦な道ではなかったはずです。そして今、それを乗り越えて卒業を迎えました。それは、城東というすばらしい教育環境の中で、目標を共にする友だちがそこにいたからであり、温かく見守ってくださったご家族があったからでしょう。皆さんは大きく成長しました。学力はもちろん、なにより人間として大きく成長しました。城東で培った人間性、学び、友情は生涯の宝物となることでしょう。
皆さんの成長は、「城東の教育」の進化でもあります。
さて、卒業生の皆さんはこれから社会への旅立ちです。私から皆さんに最後に伝えることは校訓です。「進取・協同」の気性に富んだ人材であれ。この言葉をしっかりと心に刻んでこれからの人生を歩んでもらいたいと思います。
今、社会や経済のグローバル化が進んでいます。「徹底したグローバル化」「容赦ないグローバル化」などと表現されるほど、生活のすべてにおいて、誰も逃れることのできないグローバル化です。皆さんの近未来にある学術の世界はどうか。ノーベル賞受賞者であり、理化学研究所理事長の野依良治氏の言葉をお借りすれば、「一国の発展を担う科学技術も国家の枠内にとどめておくことが難しい。優秀な人材をあらゆる階層で引き抜き合い、異才を融合して新たな知につなげようという頭脳の大循環を起こしている。(朝日新聞)」時代であるということになります。東京大学の秋入学、推薦入学などが話題となっていますが、国内の主だった大学が、グローバル人材育成戦略を掲げています。若者の内向き志向が指摘される中、国家戦略でもグローバル人材育成が掲げられています。
そこで求められるのはどのような力なのでしょうか。語学力は当然のものとして、あえて一言で表すならば「グローバルな視野と、主体的、協力的な実践力」だと考えています。「主体的、協力的な実践力」についてお話しします。野依氏のお話にもあるように、最近「異才」という言葉をよく聞くようになりました。他の人と異なる優れた才能です。持って生まれた資質も必要ですが、私は、「自分の頭で考える」ことの積み重ねが「異才」の獲得には重要であると考えます。情報を収集しながら、先入観を持たず、粘り強く「自分の頭で考える」ことの積み重ねです。それが「主体的な実践力」です。また、現在の学術研究はチームです。「異才を融合し新たな知につなげる」のは、チーム力です。異なる分野の「異才」がチームとなって、互いの考えを理解し合うことが必要です。それが「協力的な実践力」です。皆さんは城東で、この「グローバルな視野と、主体的、協力的な実践力」の基礎となる力を培ってきました。「主体的、協力的」はまさに「進取・協同」の城東スピリットです。多彩な才能と多様な個性が集まった城東で、皆さんが培った城東スピリットは、皆さんがこれからどのような人生を歩もうとも、社会や経済の進展に、そして世界の人々の幸福に貢献することでしょう。
先だって、理化学研究所、発生・再生科学総合研究センターの小保方晴子さんが、スタップ細胞を作ったことで世界から注目されました。ハーバード大学への留学期間延長、割烹着姿とともに三十歳という若さも話題性を増しています。十九世紀の数学界に、エヴァリスト・ガロアという天才がいました。ガロアは、五次方程式に解の公式が存在しないことを証明する中で「群論」を導入しました。その「群論」は、今や数学の基本概念であり、素粒子物理学の中心的原理です。ガロアは、ナポレオン帝政後の混乱の中で、政治活動に加わり、二十歳の時、決闘で撃たれて亡くなりました。ガロア二十歳の論文が新たな数学の分野を切り拓いたのです。若いということは、経験や知識は少ないかもしれませんが、それだけに先入観がなく、豊かな発想ができるということでもあります。若いということは素晴らしいことです。若い時の時間を大切にして、これからも充実した日々を送ってください。
皆さんが一年生の時に、城東は二十五周年を迎え、岡山シンフォニーホールで記念演奏会がありました。ベートーベンの第九交響曲が響き渡りました。そこには、音楽学類の生徒や音楽系の部活動をしている生徒に加え、音楽選択生、世界から県外から駆け付けた卒業生、地域の方や保護者の皆さんも参加されました。校歌は城東生が全員で歌いました。涙しながら歌ったのは私だけではないはずです。城東ファミリーの持つ「進取・協同」が多くの人とともに共有できました。「自彊なくして大志なし」「自省なくして成長なし」「集中あれば曇なし」。城東ライフで身に付けた「進取・協同」の城東スピリットを発揮し、さらにタフでスケール大きな人材に成長してくれることを期待しています。
いざ、別れの時です。校歌を高らかに歌いましょう。高い理想に向かう、大航海の始まりです。卒業生の皆さんの幸多き人生を祈念して式辞とします。
平成二十六年三月一日
岡山県立岡山城東高等学校長
石井一郎
ん・・・この人たちは24期生。昨年度卒業生代表答辞を読んだK君もいます。あれからもう1年がたつのですね。
今年も心温まる卒業式でした。25期生の皆さん、改めてご卒業おめでとうございます。これからの人生、幾多の困難に出会うことでしょう。そんな時には、城東で培った「進取協同」の精神で、荒波を乗り切ってくださいね。皆さんはいつまでも城東ファミリーの仲間です。